二人でホテルのカジノにいる反転ドラロナ
ルーレット
ルーレットに人が集っているのに興味を惹かれて、テーブルを覗いて一秒でドラルクは後悔をした。ホテルの部屋に残してきたはずのお嬢様ことロナルドが、興奮で頬を紅潮させて座っていたからである。彼にはカジノにはやってこないようにと言い含めていたはずなのに(いい子で待っていておくれと言ったら、彼は少し不満そうにけれど確かにうなずいたというのに!)ドラルクの後でもついてきたのだろうか。ロナルドの座っている席にはルーレット用のオレンジ色のチップがうずたかく積まれている。
「ロナルド君?!」
「あら、ドラルクさん」
驚いて声を上げると、それに気がついたのかロナルドは振り返ってドラルクに天真爛漫に手を振る。
「ついてきてはだめだと言っただろう」
テーブルに歩み寄ってそう言うと、ロナルドは不満に頬をわずかに膨らませる。
「私、ついてきたわけではありませんわ、遊びに来ただけですもの」
「そもそも君にギャンブルなんて」
向いてない、と言おうとしてドラルクは彼のテーブルに積まれているチップの量を無視できないことに気がついた。ルーレットとは基本的に勝ちたいのなら手堅くいくべきで、じわじわとチップを増やすゲームでもある。ロナルドがいくらチップを換金したかしらないが、こんなに一気に増えはしないはずなのだ。
「一体チップはいくら買ったんだい?」
「買ってませんわ、もう今日はゲームをやらないと言う方が残りのチップを譲ってくださったんです、私、ルーレットが得意みたいなんですのよ」
ドラルクとロナルドが話している間にも、ディーラーが盤を回し、プレイズユアベッドと宣言する。ロナルドは迷いもせずに、黒の29へとオレンジのチップを全て置く。
「私だって遊びたかったんですもの、ドラルクさんだけなんてずるいですわ」
それに今ある分だけでも換金したらお部屋をグレードアップしてくださるらしいですわよ? と無邪気に、あるいはカジノからしたら残酷に聞こえるかもしれない言葉を意気揚々とロナルドは口にする。まるで当たるのがわかっているような、それとも外れても良いと思っているのか、どちらかわからない明るい態度だ。ドラルクはため息をついてから、ロナルドの隣に座る。
「ならば私も賭けようかね」
そうして諦めたように自分の持っているチップをロナルドのチップの上に乗せる。
「君と同じところに賭ければ、明日になるまでにチップの山に埋まっていそうだからね」
ディーラーが震えた声でノーモアベッドと賭けを締め切る。勢いをなくしたボールがポケットに落ちようとしている。